医学教育学講座
講座・分野紹介
大学は、知の創造を担う研究機関であると同時に、次世代を育成する高等教育機関でもあることから、教育を体系的かつ継続的に推進する仕組みが不可欠です。こうした認識に基づき、本講座は、大学内での教育を担う「医学教育学分野」と、地域の医療現場における教育を担う「地域医療学分野」の二分野を基盤として設置されました。
医学教育学分野では、学生一人ひとりの潜在能力を最大限に引き出し、社会に貢献できる医師の育成を目指して、教育の設計と実践を行っています。近年、医学教育は大きな転換期を迎えており、社会が求める医師像(アウトカム)を明確にし、それに基づいて教育課程全体を構築する「アウトカム基盤型教育」が国際的な標準となっています。本分野では、国内外の最新の医学教育研究を踏まえつつ、本学の特性を活かした独自のカリキュラムを開発・実施し、質の高い医学教育の実現を目指しています。
地域医療学分野では、医師としての原点に立ち返る学びを重視し、早期から地域医療に触れる実習システムを通じて、学生が岩手医科大学の地域医療への貢献を実感できる教育を展開しています。こうした体験を通じて、プロフェッショナリズムを確実に身につけた医師の育成を図るとともに、岩手県が抱える医療課題の解明と実践的な研究を推進しています。また、地域包括ケアに対応した実習システムの構築にも取り組んでおり、同一キャンパスに複数学部が集う本学の特性を活かした学部横断的な教育の実現を目指しています。さらに、全国地域医療教育協議会にも参画し、地域医療教育の普遍化と質の向上に貢献しています。
本講座は、大学教育と地域医療の両面から医学教育を支え、社会に求められる医師の育成に寄与することを使命としています。
主な研究内容
本講座では、教育の質向上を目指し、教員の教育力の強化、教育方法の改善、学内教育機構の評価と組織改革、教育環境の整備に関する提言など、教育戦略の企画・立案を中心的な使命としています。
教育学は人間社会科学の一分野であり、特に医学教育においては、教育実践に根ざした質的研究が重要な位置を占めます。博士課程においては、教育に関わる現象の観察と情報収集を基盤とし、理論的枠組みに基づいた質的分析を通じて、教育の本質や課題を深く探究します。
【医学教育学分野】
医学教育学分野では、医学部教育の質向上を目的として、国内外の最新情報を収集・分析し、本学に適したカリキュラムの提案を行っています。また、新たな教育手法の導入と教員間での共有を推進し、教育実践の改善に取り組んでいます。
導入したカリキュラムや教育手法が学生に与える影響については、教育効果の検証を通じて調査・解析を行い、さらなる改善案の立案につなげています。これらの研究活動は、教育の質的向上を目指す本講座の理念と密接に関連しており、教育実践と研究の往還を重視しています。
また、教育に関する実証的な研究を進めるにあたり、Institutional Research(IR)との連携は不可欠です。本分野では、IRを保有する全学教育推進機構と協働し、教育データの収集・分析を通じて、より効果的な教育設計と評価の実現を目指しています。
【地域医療学分野】
地域医療学は、地域全体を俯瞰し、医療課題を抽出したうえで、地域の多職種が連携して患者の抱える困難をどのように解決するかを探究する学問です。さらに、そのような地域医療の実践を支える学生教育の在り方についても研究対象としています。
本分野では、総合臨床医学コースを設け、初期臨床研修を通じて地域の医療課題を実地で把握し、それに基づいた研究テーマの設定を行います。岩手県の広大な地理的特性を活かし、遠隔医療をはじめとするIoT技術の活用による地域医療の高度化に関する研究にも取り組んでいます。
また、地域医療学の知見を基盤として、学部学生に対する教育手法の開発にも力を入れており、地域医療の現場と教育の接続を重視した実践的な教育研究を推進しています。
学生へのメッセージ
良い教育があってこそ、良い医療が生まれます。「現場での実践を見つめ直し、理論を深め、より良い学びのかたちを探る」そんな研究に一緒に取り組んでみませんか?
教育を通じて医療の可能性を広げる旅を、ここから始めましょう。