耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座
講座・分野紹介
耳鼻咽喉科学は聴覚、平衡覚、嗅覚、味覚、音声・言語機能、気道、嚥下機能などヒトのQOLに関わる広範囲な領域を含む学問です。このような領域の機能障害の原因を追求し、診断、予防、治療に貢献する研究を行うことを教室の基本理念としています。
頭頸部外科学は頭頸部領域の腫瘍の診断・治療を中心に感染症や外傷なども含めた総合的な外科学を研究する学問分野です。頭頸部癌は喫煙や飲酒などのほか、ウイルス(上咽頭癌のEBV、中咽頭癌のHPV)や一部口腔癌の機械的刺激など比較的危険因子がはっきりしており、部位別にも種々の特徴があるなど研究の範囲は多岐に渡っています。本学は東北地方でも有数の症例数が集まっており、臨床研究ばかりではなく基礎研究の素地も整っています。頭頸部癌の新しい診断方法や治療法に関する研究開発に積極的に関わっていける優れた頭頸部外科医の育成を目標にしております。
主な研究内容
◇難治性耳管疾患に関する臨床研究
真珠腫性中耳炎や慢性中耳炎をはじめとする中耳疾患の原因として、耳管機能障害が関与することが知られています。われわれは、保存的治療にて改善しえない難治性耳管疾患に対して、耳管ピン手術の開発に関わりました。現在は、中耳疾患における耳管の詳細な評価をさまざまな手法を用いて行うことにより、その成因・予後等に係る研究を行っております。
◇手術における視点誘導の研究
われわれが行う手術においては、解剖知識の習得・手術手技の向上に加えて、現代の低侵襲手術では、術者の視線が手技の正確性・安全性・教育効果に大きく影響することが報告されている。そこで手術動画あるいは手術中の視線の誘導についての研究を行っている。
◇頸動脈小体腫瘍の全国調査による日本における遺伝子変異の全貌解明と新たな分類法の開発についての研究
頭頸部外科では手術難度が高く治療可能な施設が限られる頸動脈小体腫瘍の手術も扱っており,その症例につき全国で症例を登録し遺伝子変異を研究することでその家族性や悪性度につき分類し治療法を開発する。

頸動脈小体腫瘍
◇リンパ節内圧測定によるリンパ節転移の超早期診断法の開発
◇リンパ行性薬剤投与システム(LDDS)を用いた新たな効果的化学療法の開発に関する研究
頭頸部癌のリンパ節転移は全身投与による抗がん剤が届きにくい症例があり,リンパ節に直接抗がん剤を投与するための新たなシステムを研究している。

術中リンパ流の赤外線画像
学生へのメッセージ
大学院希望者は大きく耳鼻咽喉科学領域と頭頸部外科学領域のいずれかを選択し、初めの2年間は通常の後期研修の臨床修練を同時に受けながら研究の準備を行い、後半の2年間は研究の仕上げと学位論文の完成に専念できるようなプログラムを個別に作成します。
耳鼻咽喉科は聴覚、平衡覚、嗅覚、味覚、音声・言語機能、気道、嚥下機能などヒトのQOLに関わる広範囲な領域を含む診療を行っており、診断・治療まで一貫できるエキスパートを養成しています。
頭頸部外科学科は平成27年11月に開設された新しい学科ですが、令和4年4月から耳鼻咽喉科学講座と統合しました。頭頸部癌は部位により異なる特徴があり、診断・治療も多岐に渡っています。がんの基礎研究と臨床研究を結びつけるようなプロフェッショナルを養成することが課題です。
是非、耳鼻咽喉科頭頸部外科チームの一員として研究・診療に活躍してください。