薬理学講座(情報伝達医学分野)
講座・分野紹介
薬理学は薬物の生体に及ぼす影響を研究するとともに、薬物に対する生体の反応を観察することにより生体の機能を明らかとしていく学問です。このために、生化学的手法・生理学的手法・解剖・組織学的手法に加え薬理学的手法を用いる総合的分野であり、特に分子生物学的手法を積極的に取り入れた研究を行っています。本講座は、教授をはじめ中心となるスタッフが若く、大学院生の個性を尊重した柔軟な教室運営を行っていることも特色の一つです。熱意ある方の訪問を歓迎します。
主な研究内容
◇細胞の機能解析
–細胞接着因子を介した細胞形態変化の研究-
ギセリン/CD146発現と、成長因子、機械的ストレス、分化・増殖との関連について
◇神経系の機能解析
-味覚刺激時の脳活動変化についての研究-
7テスラMRI装置によるfMRIを用いた解析
◇血管系の機能解析
–高血圧・糸球体高血圧の分子機構の研究-
伸展培養装置を用いた機械的ストレスに対する、血管平滑筋細胞、糸球体内皮細胞の生体反応の分子機構解析
–ギセリン/CD146発見、他
モノクロタリン誘発肺高血圧症モデルラットの心臓および肺血管におけるギセリン/CD146発見と病態形成との関連
大動脈縮紮術による心不全モデルラットの心・血管系におけるギセリン/CD146発見と病態形成との関連
–冬眠中の筋委縮抑制機構の研究-
小動物用CTを用いた解析
◇エピジェネティクス機構と治療の解明
-脳腫瘍のエピジェネティクス機構と治療の研究-
DNA配列を変えず遺伝子発現を制御する、エピジェネティクス機構の異常を標的とした新たな診断・治療手段の研究
-急性腎障害と糖尿病性腎症のエピジェネティクス機構と治療の研究-
腎疾患の治療に向けたエピジェネティクス異常の解明と治療法研究
学生へのメッセージ
当講座では、細胞接着因子を介するがん細胞の運動や神経細胞の神経突起伸展といった細胞形態の変化機構を分子生物学的手法を用いて解析しています。
実際には、細胞接着分子遺伝子の発現調節機構および細胞接着分子を介する細胞内への情報伝達機構、さらに核内における染色体の動態や遺伝子発現調節、細胞周期制御などの機構について解明を分子レベルで行っています。また、臨床的にはがんや動脈壁の肥厚といった病態や神経再生における細胞接着分子、癌抑制遺伝子の関わりを検討しています。
実験系では、独自に見出した細胞接着因子としてはギセリン/CD146を材料として用いています。この分子は発生期神経系で見出したもので、神経突起伸展に関わっていますが、がん細胞や血管内皮でも発現しており、様々な病態に関与しています。現在、①細胞運動と②神経突起伸展機構について、③その遺伝子発現機構と④細胞内への情報伝達機構の解明から進めており、また、⑤病態への関与についても検討中であります。一方、やはり独自に見出したクロマチンリモデリングやアポトーシスに関与する癌抑制遺伝子Amida/TFPTについても、発現調節機構および核内における動態や機能、さらに発癌や発生期における働きについて解析を行っています。最近、コンディショナル・ノックアウトマウスが完成し、間もなく解析を開始します。
高血圧など循環器疾患の機構については、新たに伸展培養装置および定量PCR測定装置を導入し、分子生物学的手法を用いた研究を拡充しています。