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祖父江憲治 部門長

略歴 PROFILE

1973年3月
岩手医科大学医学部医学科 卒業
1977年3月
大阪大学大学院医学研究科 修了
1988年2月
大阪大学医学部神経薬理生化学教室教授
1988年4月
大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター高次神経医学部門神経生化学教授
1993年10月
大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター長
1994年4月
大阪大学評議員
2001年4月
大阪大学大学院医学系研究科・未来医療開発専攻教授
2007年4月
大阪大学大学院医学系研究科附属 共同研究実習センター長
2011年4月
大阪大学名誉教授
2011年4月
岩手医科大学 副学長・医歯薬総合研究所所長・神経科学研究部門長

<主要研究領域>
大脳皮質形成とシナプス形成・ダイナミクス異常による精神・神経疾患発症の分子メカニズムに関する研究

<所属学会等 >
日本細胞生物学会
日本神経化学会
日本神経科学会
北米神経科学会
日本生化学会
日本分子生物学会

細胞の形や動きの分子基盤となる
細胞骨格制御系の研究

細胞の中の骨に相当する構造「細胞骨格」に関する研究を行っています。細胞の形を決めたり、動きを調整する役割を細胞骨格が担っていますが、基本的にはタンパク質でできています。

例えば、心臓が拍動するのは、細胞骨格の調節により行われています。細胞骨格は身体中の全ての細胞に存在し、統合作用により細胞本来の機能を発揮します。この調節系・発現系に異常が起こると、病気が起こります。

私共の研究は、細胞骨格の調節機構の研究を発端として、数々の制御蛋白質を発見してきました。これまで、主に3つのテーマを研究してきました。1つは、ガ ンに関わるもの。ガン細胞が転移するメカニズムの解明です。2つ目は、細胞骨格によるシナプス形成のメカニズム。3つ目は、動脈硬化発症のメカニズム。な ぜ動脈硬化症が起こるのか。何が引き金になっているのか。どこがおかしいから病変が起きるのかについて、分子レベルで研究を行ってきました。

現在は、大脳形成とシナプス形成のメカニズム解明に特化して研究を行っています。

大脳形成とシナプス形成・ダイナミクスの異常による
精神・神経疾患発症の分子メカニズム

脳のような高度な情報処理機能はニューロン間相互作用により形成される回路網であり、このニューロン間の情報伝達の場がシナプスです。

シナプス形成とダイナミクスに細胞骨格は深く関わっていますが、ストレスなどにより、どのように障害を受けるかという研究を行っています。

ドメスティックバイオレンス(DV)などにより、母親が重大なストレス下におかれると、胎児の大脳発達は一時的に遅れます。動物実験によっても同様の大脳発達の遅れが証明されています。その後、思春期から大人になって精神疾患発症頻度が増大することも知られています。

これまで、ストレスの伝達物質である副腎皮質ホルモンが脳に障害を引き起こすことはよく知られていました。そこで、私どものグループは、副腎皮質ホルモンによる一過性大脳発達遅滞の分子メカニズムを解明しました。さらに、副腎皮質ホルモンを全く含まない神経細胞培養系を開発し、副腎皮質ホルモンを添加することによるシナプス形成阻害のメカニズムを明らかにしました。ここにも細胞骨格が重要な役割を果たしていることが判明しました。

精神・神経疾患の「発症前診断法」と
「診療法」開発の可能性

私共の研究を基盤として、岩手医大発の「精神・神経疾患の発症前診断と治療法」開発を目指しています。

研究室の壁をなくすことで可能性が広がっている「医歯薬総合研究所」

医歯薬総合研究所は学部の壁はもとより、個々の研究室の壁を全てなくし、参画型のグループ研究の場をつくることをコンセプトにしています。同研究所の活動とは別に、週に1回研究生・院生から教授まで参加した横断的な私塾を開催しています。相互に連携し競い合うことにより、研究面でもポジティブな方向に向かうことを期待しています。

学生に常に話すことですが、医療人に必要なことは「病んだ人の痛みを理解すること」です。これは医療人としての原点だと考えています。