高齢者の睡眠時間と要介護認定リスクの関連を発見 ―岩手県北地域コホートの10年追跡で明らかに―
睡眠時間は高齢者の健康と深く関わることが知られていますが、将来の要介護認定リスクとどのように関連するのかについては、長期間の追跡研究が限られていました。岩手医科大学医学部の武部 典子講師、石垣 泰教授、丹野 高三教授、赤坂 憲准教授らの研究グループは、岩手県北地域で実施されている「岩手県北地域コホート研究」に参加した65歳以上の高齢者9,576名を平均10.3年間追跡し、睡眠時間と要介護認定の関係を調べました。
まず、睡眠時間と要介護認定リスクの関連を調べる統計手法(Cox比例ハザードモデル)を用いて解析したところ、長時間睡眠(9時間以上)は、すべての要因を考慮した後も要介護認定のリスクが高いことが示されました。一方、短時間睡眠(6時間未満)は一部の要因を考慮した段階ではリスクが高いように見えましたが、すべての要因を考慮すると明確な関連は見られませんでした。
さらに、睡眠時間と要介護認定リスクの関係が直線的ではない可能性を検討するため、非線形の関係を評価する解析(制限付き3次スプライン解析)を行ったところ、非線形性の関連が認められ、特に睡眠時間が長くなるほどリスクが高まる傾向が示されました。この傾向は、特に女性と65〜74歳の前期高齢者で強く見られました。
本研究は、睡眠時間が将来の要介護認定リスクを早期に把握するための「行動のサイン」として役立つ可能性を示しており、介護予防や高齢者の健康づくりにおいて、あらためて睡眠時間の見直しが重要であることを示唆しています。本成果は、国際学術誌 Journal of the American Medical Directors Association (JAMDA) にオンライン掲載されました。
【ポイント】
- 岩手県北地域コホート研究に参加した 65歳以上の地域住民9,576名を平均10.3年間追跡し、睡眠時間と要介護認定の関連を検討しました。
- 睡眠時間と要介護認定リスクの関連を調べる統計手法(Cox比例ハザードモデル)を用いたところ、7–8時間の睡眠と比較して、長時間睡眠(9時間以上)は要介護認定リスクの上昇と関連が認められました。
- 短時間睡眠(6時間未満) は一部の要因を考慮した段階ではリスクが高いように見えましたが、すべての要因を考慮すると明確な関連は見られませんでした。
- 非線形(直線的でない)の関係を評価する解析(制限付き3次スプライン解析)を行ったところ、睡眠時間と要介護認定の間に非線形パターンが確認され、特に長時間睡眠でリスク上昇が顕著でした。
- 性別や年齢層で分けた解析では、女性と65–74歳の前期高齢者で非線形性がより顕著でした。
- 睡眠時間に着目した介入や生活指導により、高齢者の要介護への移行の予防に貢献できる可能性を示唆するものです。
