患者適応型抗がん剤治療(オーダーメイドがん治療)実現を可能にする抗がん剤耐性検査の開発へ
岩手医科大学薬学部医療薬科学講座薬物代謝動態学分野(幅野 渉教授)の寺島 潤講師とアイカムス・ラボ(本社 盛岡市)は、次世代の細胞培養技術の確立を目指し、共同で新しい細胞培養デバイスを開発し、特許を出願しました。本デバイスは、細胞塊(スフェロイドやオルガノイドなど)の培養環境を効率的に制御・変更できる新構造を有しており、培養条件の切り替えや試薬交換を容易に行うことが可能です。これにより、疾患モデル細胞の作製過程でこれまで大きな課題とされてきた「時間」「手間」「再現性」の問題を大幅に改善できることが期待されています。従来の方法が要した複雑な培養工程を、より短期間で安定して実施できるようになり、研究開発のスピードを飛躍的に向上させることが期待されます。
この細胞培養デバイスによって、多種多様な抗がん剤とがん種の組み合わせによる人工抗がん剤耐性がん細胞の作成がこれまでと比べて飛躍的に効率化され、基礎研究から臨床研究、そして臨床検査開発へ大きくすすめることが可能となりました。
今後は、岩手医科大学附属病院病理診断科と共同研究グループを立ち上げ、同大学が2022年に出願した「抗がん剤耐性細胞の作製方法」の技術をさらに発展・統合させ、本特許によって効率化された方法により、多種多様な抗がん剤とがん細胞の組み合わせで抗がん剤耐性細胞を作成します。そして、この新たに作製した耐性細胞と、病理診断科が保有する臨床検体を比較・解析することで、より実際の患者に近い耐性機構の理解を深め、新しい抗がん剤耐性検査法の開発、事業化を行う計画です。
さらに将来的には、iPS細胞や幹細胞技術との組み合わせにより、本デバイスをがん以外の領域にも応用し、神経疾患、心疾患、代謝疾患など多様な疾患モデル細胞の構築を推進します。これらの疾患モデルを活用し、病理学的・分子生物学的な解析を通じて新しい診断法や治療法の確立を目指すことで、基礎研究から臨床応用までを一貫してつなぐ研究体制の構築を進めます。岩手医科大学、岩手医科大学附属病院、アイカムス・ラボの連携によるこの取り組みは、疾患研究や個別化医療の発展に向けた大きな一歩であり、岩手県から発信する先進的な医療研究モデルとしても期待されています。
<問い合わせ先>
岩手医科大学薬学部 医療薬科学講座薬物代謝動態学分野
講師 寺島 潤(てらしま じゅん)
電話:080-5572-4820
E-mail:jterashi@iwate-med.ac.jp
