がん細胞の悪性化に関与する新しいパスウェイを発見(薬学部薬物代謝動態学講座)
薬学部薬物代謝動態学講座の小澤正吾教授と寺島潤助教らは、がん細胞の悪性化に関与する新しいパスウェイを発見し、日本薬物代謝動態学会発行の国際学術誌「Drug Metabolism and Pharmacokinetics」に原著論文を発表し、この内容について1月に行われた国際シンポジウム、「Past, Present and Future of Molecular Pharmacokineticsでも発表しました。さらにこれらの研究内容については盛岡タイムス、岩手日報にも取り上げられました。
がん細胞塊が成長し、中央部の細胞が低酸素状態になると、がん細胞は血管を細胞塊内に形成し、さらなるがん細胞塊の成長、新しくできた血管を経由した他臓器への転移などの悪性化の原因となります。がん細胞塊中央部は低酸素のみでなく、低栄養状態でもあり、がん細胞の悪性化は低栄養でも誘導されると考えられています。
今回の論文では、グルコース濃度の低下が誘導するがん悪性化の経路を明らかにしたものであり、薬物代謝酵素の発現調節を行うアリルハイドロカーボン受容体(AhR)が低濃度グルコースに応答してがん細胞の悪性化を誘導することを示しました。生体外からの化合物に応答して薬物代謝をコントロールするAhRが、がん細胞のおかれている環境に応答し悪性化を誘導することを見出した研究はこれが初めてです。この研究はがん悪性化抑制を目的とした創薬につながる可能性があり、またがん進行に伴う薬物代謝能力の変動を知ることにより抗がん剤治療への大きな寄与が期待されます。