最新ニュース

HOME > 最新ニュース > 研究 > 歯髄リンパ管の立体構造を世界で初めて可視化 -歯の中に存在するリンパ管ネットワークとその動態を解明-

歯髄リンパ管の立体構造を世界で初めて可視化 -歯の中に存在するリンパ管ネットワークとその動態を解明-

東京科学大学(Science Tokyo)大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 口腔機能再構築学講座 歯髄生物学分野の田澤建人助教、ミシガン大学 歯学部 う蝕・修復・歯内療法学講座の佐々木元准教授、岩手医科大学 歯学部 口腔医学講座 歯科医学教育学分野(前 解剖学講座 機能形態学分野)の藤村朗教授らの研究チームは、歯髓内にリンパ管が存在し、炎症刺激などに応じてその構造が動的に変化することを明らかにしました。
これまで、歯の中にある歯髓にリンパ管が存在し機能しているかどうかは、明確には分かっていませんでした。本研究では、蛍光タンパク質を用いた遺伝子改変マウス(Prox1-eGFPマウス)と、組織透明化技術を組み合わせることで、歯内に存在するリンパ管ネットワーク構造を世界で初めて可視化しました。
また、歯の発達に伴ってリンパ管構造が変化し、その数が減少すること、炎症刺激によってリンパ管が一時的に増加することを明らかにしました。さらに、歯に取り込まれた墨汁粒子の動きを観察することで、細胞間の隙間が組織液の移動経路となっていること、そして歯内のリンパ管が組織液の排出に関与していることを突き止めました。
本研究は、歯髓にリンパ管が存在するかどうかという、長年にわたり続いていた論争に対して、新たな視覚的証拠を提示するものです。 加えて、炎症刺激に応じたリンパ管構造の可逆的変化や、間質液の排出経路の可能性を明らかにしたことにより、歯髓の恒常性維持や病態理解に新たな知見を提供しました。
今回の成果は、再生歯髓におけるリンパ管機能の評価や、歯の炎症時にリンパ管を介して移動する抗原提示細胞の動態解析など、今後の基礎研究の発展に貢献することが期待されます。将来的には、組織再生やリンパ浮腫など、リンパ管の再構築が求められる疾患分野への応用研究にもつながる可能性があります。
研究成果は国際科学誌「International Endodontic journal」において、2025年4月25日にオンライン版で掲載されました。