教育
HOME > 教育 > 学部紹介 > 医学部講座・学科紹介 > 睡眠医療学科

睡眠医療学科

当学科は旧呼吸器内科学講座の呼吸生理研究室を母体とし、睡眠中に生じる健康障害や睡眠という生理現象が関与する疾患を中心に、内科学を基盤とした睡眠医学と行動医学を実際の医療に応用することをテーマに創設された新しい発想の学科です。
診療の範囲や講義での担当分野は幅広く、1年生の文学(医療と文学)に関する講義や医学概論にはじまり、2年生、3年生では生理検査や呼吸器病学の一部として睡眠関連検査の方法と解釈、呼吸不全や睡眠関連呼吸障害に関する診断と治療について学びます。5・6年生の実習では、実際に自ら睡眠検査を受ける体験を通じて、睡眠関連疾患の特性を理解し「患者の立場が分かる医師」となることを目指します。

講座・教室からひとこと

櫻井 滋 教授

櫻井 滋 教授

内科や外科の講座は多くの細かい分野によって構成されていますが、当学科は独立して設置されているという性質上、教室は各講座の半分にあたる運営規模です。メンバーは基本的に呼吸器内科医としての経験を有しています。さらに秋田大学の精神科学講座における専門研修や睡眠生理や生化学的研究手法の習得を目的とした留学を経て当科に参加し、睡眠医療の啓発と教育、さらに診療と研究に取り組んでいます。
主任教授は現在、睡眠や行動、感染制御を専門としていますが、胸部外科や麻酔科での臨床研修経験を有し、呼吸管理学を主とする呼吸器内科の専門医でもあります。さらに、医療関連感染の制御、新興感染症危機管理、災害時感染制御に関する活動も積極的に行なっています。
また、睡眠関連の研究で医学博士の学位を取得した先輩たちは、睡眠学会の睡眠医療の認定として、あるいは県内外で睡眠に関する専門的診療が可能な内科医院を開業して睡眠医療を地域に提供し、地域の医療機関の責任ある立場で活躍しています。

つまり、当教室を経た先輩たちは睡眠関連の健康障害やヒトの行動に詳しい内科臨床医や睡眠検査を特技とする臨床検査技師として活躍しています。

講座・教室の基本理念

「睡眠」という生理現象は、人生の三分の一を占めるにもかかわらず、歴史的には長い間「想像と迷信」の領域にありました。しかし近年、急速に科学的解明がなされています。当科は、これら睡眠研究の最新知見をもとに、その研究成果を臨床医学に応用することを基本理念としています。
当教室はヒトの行動に関する科学的理解を基盤とし、特に睡眠呼吸障害、不眠症、過眠症などの睡眠関連疾患に関する幅広い知識を備え、各種病態と行動睡眠との関わりや、ヒトの行動制御(医療関連感染制御)などの行動医学的課題について、総合的、横断的に洞察できる能力を有する内科学、精神神経科学および歯科学系の臨床指導者および医学研究者を育成することを目標としています。
学部教育においては、3年生と4年生に臨床検査の一部として講義を行います。5年生では各グループごとに臨床実習を行います。臨床実習では、実習毎のゴールを設け、睡眠医療や感染症の診断や制御に必要な検査法に関する具体的解説、検査や感染制御策の実技OSCEや確認テストなどを行います。さらに5年または6年生の高次実習では、十分な時間をかけて睡眠医療の実際や検査業務、研究の実際に触れる機会を提供します。
臨床データからその解釈法を学び、医師国家試験あるいは卒後臨床研修に必要な知識・技能・態度も習得します。さらに、教室の医師がかかわっている睡眠医療、院内感染対策業務を体験し、プライマリケアや予防医学など横断的診療支援の重要性について学びます。従って、内科や外科などを医療の縦糸とすれば、睡眠医療学科はすべての領域に関係する横糸のような存在と言えるでしょう。

主な研究内容および診療内容

睡眠に関する医学的理解は、人々が無意識のうちに影響を受けている「自身の行動」を理解することにつながると私たちは考えています。人々は「自分を最も良く知っているのは自分自身」と考えがちですが、睡眠中においては自らが誰であり、どのように振舞っているかさえ知るすべがありません。したがって、多くの人々は睡眠している時間を無視し、あまつさえ睡眠が無駄な時間と捉える傾向が顕著です。
一方、身体的には十分な睡眠が得られているにもかかわらず充足感が得られない例や、睡眠時間ばかりに拘る例があります。しかし、これらの訴えは自らの睡眠を知るだけで改善する場合があります。このように、睡眠を人々の振る舞い(行動)として捉えた場合には、時には誤解に基づく振る舞い自体が、睡眠や目覚めている時間の体調に影響するのは当然のことと考えられます。

当教室では、自覚症状に乏しい一方で、深刻な健康被害や労働災害の端緒となることが知られている睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)を中心に、意識される日中の生活と意識されない「睡眠中の生活」をつなぐ、様々な知見を収集しています。
大学病院では、睡眠医療科を運営して外来診療と入院検査を多数の睡眠呼吸障害(無呼吸症候群)や不眠症、過眠症、レストレス・レッグ症候群などの患者さんを診療しています。さらに、臨床検査医学講座や外科学講座、矯正歯科、糖代謝内科と共同で研究を進めるなど幅広い診療研究業務を行っています。特に、災害時にも継続的に使用可能な電源内蔵型の睡眠呼吸障害治療機器CPAPを独自に開発しており、睡眠中の総合的生理検査のひとつである終夜睡眠ポリグラフや神経ペプタイドの解析などを駆使して、睡眠時無呼吸や不眠症、過眠症などの睡眠に関する健康問題に広範囲に取り組んでいます。

主な研究内容
1)睡眠呼吸障害患者の治療機器に関する研究開発
東日本大震災での経験を端緒に、厚生労働省の助成を受けて電源喪失状態でも数日間使用可能で遠隔地でも療養状況が把握可能な睡眠呼吸障害の治療機器(CPAP装置)を本学独自で開発しています。すでに昨年には試作機が完成し、臨床応用を目的に厚生労働省への認可申請の段階にあります。(櫻井教授)

2)睡眠呼吸障害患者におけるバイオマーカーの探索研究
疾患に特異的な神経ペプチドや炎症性タンパクなどを検索し、これまで血漿中オレキシンをはじめ、バスピン、キスペプチン、可溶性プロレニン受容体などと睡眠呼吸障害の関係を明らかにし、海外の専門誌上で報告してきました。(西島准教授)

3)過眠症の客観的評価に関する研究
覚醒を維持することが困難な「過眠症状」は自覚的な評価のみでは判断できない障害です。この症状を簡易な方法で客観的に評価する方法を検討し、覚醒維持試験の一種であるOSLERテストの導入に向けて基礎的検証を行なっています。(細川助教)

4)メタボリックサージェリー(肥満外科)の睡眠呼吸障害に対する効果に関する研究
単に見た目の肥満を改善する整容的な外科手術ではなく、内視鏡的に胃を部分的に切除する方法で行う、肥満外科(Bariatric Surgery)は糖尿病をはじめとする代謝性疾患を治癒させる効果が確認されており、睡眠呼吸障害に対する効果も期待されています。当科は外科学講座との共同研究として、睡眠呼吸障害の改善効果やメカニズムを長期的に検討しています。(木澤助教)

5)全国の睡眠研究機関との共同研究
全国に点在する呼吸器科や睡眠専門の研究機関と共同でいくつかの研究プロジェクトが進行しています。その成果や課題は全国規模の次世代睡眠研究者のための研究会で毎年発表されるほか、冬季に岩手で開催される「北東北睡眠呼吸障害研究会冬季研修会:冬ゼミ」の例会で検討されます。また、大学院では睡眠医療において著名な山城義広 非常勤講師(沖縄)の講義を受ける機会があります。

6)行動学を応用した感染制御に関する研究
感染症は人々の社会生活の中で伝播し、その伝播様式は無意識の行動に端緒が存在します。医療施設や病院、災害時の避難施設などでは好むと好まざるに関わらず集団生活が強いられることになり、感染症の蔓延を誘発しやすい状況が生じます。当科は行動学的視点から医療関連感染の制御に取り組んでおり、これまで岩手医科大学附属病院における「感染経路別ゾーニングシステム」や「抗菌薬適正使用管理システム」などを発案し実現してきました。また、災害時の感染制御支援組織である「いわて感染制御支援チーム」の統括部にも参画し、災害時感染性制御のあり方に関する研究も行なっています。