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平成25年度卒業式式辞

本日、卒業式を挙行できますことは本学にとりまして誠に大きな喜びであります。只今、学位記、卒業証書をお渡しした諸君に、心からお祝いを申し上げます。

さて、諸君が今日あるのは、ご両親、ご親族の皆様の今日までのご支援があってのことであります。関係の皆様は卒業生以上にお喜びの事と思います。心からお慶び申し上げます。また、ご指導下さった教職員各位に対して、学長として深甚なる感謝の意を表します。

まず、卒業生諸君に申し上げます。諸君には、「病を抱えた弱者の立場に立つ良識ある医療人」として自己研鑽して頂きたいと思います。医学医療は、「病」のみを診るのではありません。病を抱えた「人」を診るのであり、「医療人たる前に誠の人間たれ。」という本学の建学の精神は「人」を診るという全人的医療の基本であります。また、日々進歩し変わってゆく医学・医療の中で、生涯にわたり学習を継続してゆくことが「有能な医療人」たる条件です。病を抱えた弱者のために最善を尽くそうとする高邁な理想を持っていても、日々刻々と進歩発展し変わってゆく「医療の技術と知識」の中で、最新医療を実践できる力がなければ、患者さんの幸せには結び付きません。従って、「知識と技術」を最新のものとする生涯学習の努力なしには「誠の医療人」にはなれないことを認識して頂きたいと思います。

「三たび肱折る」の言葉が校歌の三番の歌詞に謳われています。これは中国の古典「春秋左氏伝」の中で述べられている言葉で「医療人自らが痛みや苦しさを知ってはじめて有能な医療人となれる。」の意味で、ひるがえって考えれば「患者さんの痛みや苦しみを自らのものとして感じ、日々努力して経験を積まなければ立派な医療人になれない。」という意味であり、これを心に留め、精進していただきたいと思います。

次に、新博士となられた諸君に申し上げます。大学院は最高学府の中の最上位に位置し、学位の称号は、学問の深奥を極めた人にのみ授与されるものであります。しかし、研究には終わりはありません。その意味では、生涯続く研究の新しいスタートラインについたというべきでしょう。諸君には更なる研鑽を重ね、自らの研究を発展させ、学者として、指導者として、人類の福祉のため医療の発展に一層の努力をされることを切に望みます。

さて、明治21年、学校制度変更により、県立の医学校が廃止となりました。全国のほとんどの県立医育機関も同様な憂き目を受けました。この窮状を見かねた本学創始者三田俊次郎先生は、北東北の医療の貧困を憂い、明治30年私財をなげうち私立岩手病院、医学講習所を創設されたのです。当時は後に旧帝国大学の一部となる第一から第五高等学校医学部等や、私学では野口英世が学んだ済生学舎、後に慈恵になる成医会講習所などしかなく、本学の前身は、地方において、志高く私財を投げ打って医療人育成を目指した希有な学校だったと言えます。

現在は、総合移転整備計画の最終段階にあり、矢巾キャンパスの1,000床の新病院は平成31年、内丸メディカルセンターは平成30年に運用が開始されます。世界に冠たる高規格病院となる予定です。その前年の平成29年には創立120周年を迎える事になります。この歴史は日本で二番目に創設された旧京都帝国大学と全く同じです。大々的にお祝いしたいと考えております。

諸君は、この様な輝かしい歴史を有する岩手医科大学の同窓の一員となりました。時代、時代の危機的状況を、大変なご努力で切り抜けられてきた先人がいらっしゃったから、本学が現代に存在し、諸君も学ぶことができたことを忘れてはなりません。従って、歴史を後輩に引き継いでゆく責務を負ったという自覚を強くもって頂くことを切望します。現在、本学は、教育、診療、研究共に、本邦のみならず世界に向かって様々な新たな試みを発信しております。この実績を基に世界に冠たる大学として飛躍発展を目指します。諸君は、母校を誇りに思い、その誇りを糧に世界へ羽ばたいて頂くことを切に願います。

最後に、諸君は、医師、歯科医師、薬剤師、研究者、教育者として社会から大きな期待を寄せられています。今後は、社会に貢献し、学則に明記されている「出でては厚生済民に尽くし、入っては真摯な学者として、この道の進歩発展に貢献する」この部分はとても大事なのでもう一度申し上げます。「出でては厚生済民に尽くし、入っては真摯な学者として、この道の進歩発展に貢献する」有能な人材に育ち、母校に光を当てる人材になって頂くことを切にご期待申しあげ式辞といたします。

 (平成26年3月7日 岩手県民会館)