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平成23年度卒業式式辞

 

平成23年度卒業式

 本日ここに、大学院学位記授与式、医学部、歯学部卒業証書・学位記授与式を挙行できますことは本学にとりまして誠に大きな喜びであります。只今、学位記、そして卒業証書をお渡しした諸君に、心からお祝いを申し上げます。
 諸君が今日あるのは、ご両親、ご親族の皆様の今日までのご支援があってのことであります。その意味で、ご両親、ご親族の皆様は諸君ご自身以上にお喜びの事と思います。誠におめでとうございます。また、学内にあっては諸君を今日までご指導下さった教職員各位に対して、学長として深甚なる感謝の意を表します。
 さて、昨年の卒業式は3月10日「東日本大震災津波」発災の前日に挙行されました。以来、早一年が過ぎました。諸君はこの大災害を経験しながら最終学年を過ごしました。大学院生は災害医療チームの一員として、災害医療に直接関わりました。まさに、普段では経験できない貴重な経験から多くの事を学んだと思います。
 発災直後の大混乱の中、本学は全県の災害医療の拠点病院としてその任務を如何なく発揮しました。行政を指導し県災害対策本部内に災害医療の司令塔のセクションを構築し、情報収集から、災害医療チームの派遣に至るまで、まさに獅子奮迅の働きをしたと言って良いでしょう。大学の強力なリーダーシップのもと被災県の中でも、他県に先駆けて一早く医療体制整備を確立した事実は広く知られる事となり、中央からも高く評価されています。
 今後の医療体制のありかたに対しても、いち早く提言し、県、国の方向性に大きな影響を与えました。この様に、3・11大災害における医療分野での危機管理体制のリーダーシップによって本学の名声はゆるぎないものとなりました。この災害からの再生には長い時間を要するでしょう。本学にはさらに一層の活躍が期待されています。厚生済民、不撓不屈の学是の下、努力して行く必要があると思います。
 新医師、歯科医師となる卒業生諸君に申し上げます。諸君には、「良医」として、また、「病を抱えた弱者の立場に立つ良識ある医療人」として自己研鑽して頂きたいと思います。医学医療は、病気のみを診るのではありません。病を抱えた「人」を診るのであり、「医療人たる前に誠の人間たれ。」という本学の建学の精神は「人」を診る医療の基本であります。
 また、日々進歩し変わってゆく医学・医療の中で、生涯にわたり学習を継続してゆくことが「有能な良医」たる条件です。病を抱えた弱者のために最善を尽くそうとしても、「日々変わってゆく医療技術と知識」を自ら更新し最新医療を実践できる力がなければ患者の幸せには結び付きません。従って、生涯学習なしには「誠の医師」にはなれないことを認識して頂きたいと思います。
 次に、新博士・修士となられた諸君に申し上げます。大学院は最高学府の中の最上位に位置し、学位の称号は、学問の深奥を極めた人にのみ授与されるものであります。諸君の研究は一段落しましたが、研究には終わりはありません。その意味では、生涯続く研究の新しいスタートラインについたというべきでしょう。諸君には更なる研鑽を重ね、今後、自らの研究を発展させ、学者として、指導者として、人類の福祉のため医歯学医療の発展に一層の努力をされることを切に望みます。
 さて、母校岩手医科大学は、総合移転整備計画が進んでおります。矢巾新キャンパスは着々と整備されています。基礎講座は統合され「統合基礎講座」として再編されました。学部を超えた講座の統合は本邦初の試みです。この学部の垣根を超えた教育・研究・診療の連携は、将来の大学の在り方の新しいモデルとなる壮大な社会実験であり、世界に類のない新しいコンセプトです。
 また、歯学部ではハーバード大学のご協力を得て歯学改革プロジェクトが進行中です。さらに、医歯薬総合研究所では次世代型最新鋭ソフトを搭載した7テスラMRIの世界第一号機が稼働を開始しました。災害関連では、今春よりドクターヘリの運用が開始され、フライトドクターが矢巾の基地に常駐し活動を開始します。また、災害医学講座、災害地域精神医学講座を新設しました。そして完全免震で独自の非常用発電装置をそなえ、全県の医療データのサーバーを完備した災害時地域医療支援教育センター機能をもつマルチメディア教育研究棟建築に着手します。一年後には矢巾に東講義実習棟と同規模の建物が完成し運用を開始します。
 この様に、母校は、様々な新たな試みを基に世界に冠たる大学として飛躍発展を目指します。諸君は、母校を誇りに思い、その誇りを糧に世界へ羽ばたいて頂くことを切に希望します。
 さて、本学の源は三田俊次郎先生によって明治三十年に創設された医学講習所にさかのぼることができます。以来115年の長い歴史には多くの同窓生、学生、教職員の結束と連帯、母校に対する献身的支援あってのことであります。先人のご労苦があってこそ、諸君の今日があるということを忘れてはなりません。諸君には、この輝かしい歴史を有する同窓の一員として、後輩にこの歴史を引き継いでゆく責務を負ったという自覚を強くもって頂くことを切望します。
 最後に、諸君は、医師、歯科医師、研究者として社会から大きな期待を寄せられています。今後は、各分野で立派なご業績をあげられている諸先輩と共に活躍され、社会に貢献し、引いては母校岩手医科大学に光を当てる人材になって頂くことを切にご期待申し上げ式辞といたします。

(平成24年3月9日 岩手県民会館)