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平成21年度薬学部1・2・3学年父兄懇談会

平成21年度薬学部1・2・3学年父兄懇談会本日は、たくさんのご父兄に出席いただいた中で父兄懇談会を開催できますことを光栄に思っています。
本学は、明治30年に私立岩手病院が創設され、そのときに医学講習所がつくられたところから始まっており、非常に長い歴史を誇っています。先日、ハー バード大学を訪れる機会がありましたが、アメリカでもっとも古いハーバード・メディカルスクールより、本学は2年早い創設となっています。明治34年には 私立岩手医学校となり、廃校などの歴史も経て、昭和3年に岩手医学専門学校となりました。戦後、学校制度が変わり、岩手医科大学に昇格して62年となりま す。
創立当時の病院の写真を見ると、たくさんの看護婦さんが写っています。医者だけを養成しても医学はできないという考えから、講習所と同時に、看護・産婆 学校を作ったのです。看護師養成制度が始まったのが明治34年ですから、それより2年も早い頃から、コ・メディカルの養成が必要であると考えたのは、本学 の創始者である三田俊次郎先生の先見の明を表しているものと思います。以来、「不撓不屈」「誠の人間」「厚生済民」を学是として進んできました。
医療は、患者がいなければ成り立ちません。患者を診て、医療を現場で実践できる医療者こそ、いま求められています。患者、家族のために、さまざまな職種 の人たちが連携し、協力して病院を運営しなければ、患者は治りません。その中核となる医師・歯科医師・薬剤師を養成する学部を持っていることは、極めて大 きいことだと思います。
医療従事者にとって、もっとも大事なのは心であり、私たちはそのことを常に頭に入れて教育に臨んでいます。学則第1条にあるように、医師・歯科医師・薬剤師を養成するだけではなく、教育を通じて人間を育成することを学是としているのです。
平成19年に薬学部が発足し、完成年度を迎える平成25年に医・歯・薬の統合大学院を創設する予定で進んでいます。今日お集まりのご父母の子弟は1・2・3期生であり、まさに岩手医科大学薬学部の歴史を創っていくことになります。
6年間は長いように感じるかと思いますが、第1期生はすでに3年生です。あっという間の3年間ではなかったかと思います。今後の3年間は、もっと時間が 短く感じられると思います。本学の特色は、医・歯・薬の総合医系大学として、3学部が連携して教育に取り組んでいることです。そして常に学部の垣根のな い、教育・診療・研究を目指しています。ですから、矢巾キャンパスの建物群は学部で区別せず、すべて岩手医科大学研究棟ということになっています。子弟 も、学部を越えて医・歯・薬学部の学生とともに学んでいます。
歴史をひもとくと、昭和24年、日本で初めての角膜移植が本学で行われました。執刀した今泉先生は、角膜移植の功労者としてアメリカでジョンソン大統領 から感謝状を贈られたということです。脳卒中の患者を救急車で病院に運ぶのは、今では当然のこととなっていますが、かつては「安静にしなさい」ということ が、まことしやかに言われていました。脳卒中患者の救急搬送を日本で初めて普及させたのも本学です。最近では、小児科の藤原名誉教授が、世界で初めて人工 サーファクタントを実用化しました。今もこの薬が世界中で使われ、毎年、何十万人もの命を救っています。
10年前には、世界で15台目、国内では3台目となる機器を導入し、超高磁場MRI研究施設をつくりました。以来、10年間に600編近いの英文の論文 を作成し、この分野のメッカとして機能しています。現在、さらに新しい超高磁場MRI研究所を建築中で、来年には稼働する予定です。前のMRI施設の実績 も踏まえ、欧米から多くの共同研究の依頼が寄せられています。これをもとに、さまざまな研究に発展させていければと考えています。
研究・教育・診療は、大学において三位一体となるものです。しかし国立大学は、長年続いた教員の定員削減と、5年前に行われた法人化でたいへん疲弊して おり、教育力が極めて低下しています。患者がいなければ、医学教育は成り立ちません。東北には附属病院を持つ大学が6校ありますが、本学の病院がもっとも 大きく、学生一人当たりの病床数、教員数も、もっとも多くなっています。実際に臨床現場で働いている薬剤師が多く、その意味でも、子弟の教育に力強いもの と考えています。
医学部の国家試験の合格率を見る場合、それは入学者数と比較しなければなりません。本学は99.4%、すなわち入学者のほとんどが医師のライセンスを取 得していることになります。全国80大学医学部の中で10番目です。したがって本学に入学した学生については、卒業し、ライセンスを取るところまでしっか りと指導しているということです。
薬学部1期生は、3年後に国家試験が待っています。それに向けて、着々と準備を進めているところです。進路指導室も設置する予定です。学生諸君のモチ ベーションに応じて、いろいろな職種を選択できると思います。非常に良い環境で、優秀な先生方に恵まれており、本学薬学部は非常に良いポジションにあると 思っています。また、矢巾キャンパスでの建物群の建築も進み、再来年4月には医・歯学部の基礎部分が矢巾に合流する予定です。その後、附属病院の建築も予 定されています。今後ますます発展していくものと考えています。  大学には教員がいて、学生がいて、ご父母の協力がある。その三位一体となった努力で、大学は形づくられていきます。今後とも皆様から大学の運営等に関し てご意見をいただき、より良い大学を目指していく所存です。よろしくお願いいたします。

(平成21年10月24日 ホテルメトロポリタン盛岡 本館)