口腔医学講座 予防歯科学分野

講座概要

すべてのライフステージを通じて、口腔の健康はよりよい生活の質(QOL)のみなもとです。予防歯科学分野では、子どもから高齢者、全身疾患の治療前後、さらには大規模災害後など、人生のあらゆる状況において口腔の健康の維持、増進に寄与するよう、齲蝕、歯周病、口臭、がん治療の副作用による口腔粘膜炎などの予防に取り組んでいます。

特徴的な臨床の取り組み

予防歯科学分野では、内丸の歯科医療センターと矢巾町の附属病院の2施設において、歯科診療に携わっております。

内丸の歯科医療センターの「口腔ケア・予防歯科外来」では、歯科治療が終了した患者のメインテナンス、齲蝕・歯周疾患の定期的な口腔管理を行っています。齲蝕など治療を必要とする場合は院内の専門外来へ紹介し、各科と連携体制を敷いています。また、口臭を訴える患者の口臭測定を行い、測定後の結果をもとにカウンセリングや治療を行っております。

矢巾町の附属病院の「口腔医療センター」では、本学医科診療科の入院患者、特に悪性腫瘍の治療目的に手術、化学療法を予定している患者の周術期口腔管理を行っております。医科診療科と連携し、入院期間中の術前から術後まで、口腔粘膜炎などの口腔合併症予防のための口腔内管理を行っております。

分野から

2040年には、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が約35%に達すると推計されています。このような超高齢社会においては、生涯を通じて口腔の健康を維持することが、これまで以上に重要となります。

例えば、高齢者の口腔機能が低下すると、食事を十分に摂取することが難しくなり、低栄養や体重減少を招き、さらにはフレイル(虚弱)の原因となる可能性があります。また、口腔衛生状態が不良であると、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まります。さらに、がん治療などで行われる放射線療法や化学療法は、歯科疾患の悪化や重篤な口腔粘膜炎を引き起こすことがあります。口腔衛生状態の悪化は、術後肺炎をはじめとする呼吸器合併症の発症にも関係すると考えられています。

一方、ここ数十年の間に、小児のう蝕や高齢期における歯の喪失は著しく減少しました。しかし、超高齢社会の到来、全身疾患に対する治療の高度化、大規模災害の頻発といった社会環境の変化に伴い、歯科保健医療に対する新たなニーズが数多く生じています。同時に、「歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)」の成立に代表されるように、歯科保健医療を取り巻く法律や制度も大きく変化しています。

私たちは、こうした時代の要請に応えるため、臨床・研究・教育の各分野に取り組んでいます。臨床では、医科各診療科からの依頼を受け、歯科衛生士と連携しながら周術期等の口腔機能管理を行っています。また、歯科疾患が安定している患者に対する継続的なメインテナンスや、口臭外来も担当しています。

研究では、周術期における効果的な口腔管理・口腔ケアに関する研究などを進めています。教育では、口腔衛生学・公衆衛生学、社会歯科学および予防歯科学を担当し、歯科医療のみならず、社会全体を広い視野で捉えることのできる次世代の歯科医師の育成を目指しています。

講座スタッフ

准教授佐藤 俊郎さとう としろう
特任講師衣斐 美歩いび みほ
助教大石 泰子おおいし たいこ
助教佐藤 華子さとう はなこ
助教杉山 由紀子すぎやま ゆきこ

講座における主たる研究テーマ

  • 東日本大震災被災地における口腔健康調査の後向きコホート研究
  • 舌苔微生物に関する研究
  • 周術期の口腔粘膜の要因と予防法に関する研究

講座の主な業績

  1. S Kimura, E Hirata, Y Takano, M Ibi, N Ushijima, E Miyako, M Yudasaka, Y Maeda, D Konishi, K Sakaguchi, A Yokoyama. Carbon nanohorn coating on titanium promotes M2 macrophage polarization. Dent Mater J. Sep 30;44(5):564-571. 2025.
  1. Kumagai, A., Oishi, T., Sato, H., Sugiyama, Y., Sato, T., *Cameriere, R. :Effects of long-term steroid therapy on the results of dental age estimation using pulp/tooth ratio. The Journal of Forensic Odonto-Stomatology 42 (3):2-8, (2024)
  1. Akiyama N, Akiyama T, Sato G, Shiroiwa T, Kishi M: Comparison of physicians’ and dentists’ incident reports in open data from the Japanese Council for Quality Health Care: a mixed-method study.  BMC Oral Health  23(1) 67. DOI: 10.1186/s12903-023-02749-x,2023.
  1. Sato H, Yano A, Shimoyama Y, Sato T, Sugiyama Y, Kishi M.: Associations of streptococci and fungi amounts in the oral cavity with nutritional and oral health status in institutionalized elders: a cross sectional study. BMC Oral Health 21(1):590. doi: 10.1186/s12903-021-01926-0, 2021