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岩手県災害対策本部内で活動した岩手県DMAT調整本部の活動記録を集計し、東日本大震災・津波発災後の3月12日から18日にヘリコプターにて広域搬送された患者191名の予後の整理を行いました。
第25回日本集団災害医学会(平成26年2月25日~26日、東京)にて上記集計結果を発表し、今後のわが国における広域搬送やSCU(Staging Care Unit)のあり方を提言しました。
「いわて災害医療支援ネットワーク」等が発災1ヶ月後に実施した岩手県沿岸部の主要避難所52ヶ所の生活環境に関するデータ及びその後に災害医学講座等が実施したフォローアップ調査のデータについて、解析を実施しました。 避難者数、年齢構成、施設種別といった基本情報のほか、電気・水道・通信・食生活の状況、管理のための自治や人的/物的支援の状況、要援護者への対応状況、生活スペースへの自己評価等、多くの調査項目があり、単純集計で整理をしながら、項目間の連携について検討しました。 また、平成25年6月より、「まちづくり」や「コミュニティーデザイン」を専門とする岩手県立大学総合政策学部倉原宗孝教授との情報交換を行っています。
市町村を越えた50ヶ所以上の継時的な避難所生活の報告は本邦では例がありません。 本調査の結果の一部からは、避難所生活の質を左右する要因として、インフラの整備や物資の供給のみならず、自助・共助が大きな役割を果たしますが、特に自治が活発な避難所では、避難者の満足度は高くならず、生活の質を向上させるために積極的に取り組むことが示唆されています。 避難者の生活に対する意識は、避難者の健康問題とも直結します。本調査のデータは、避難所の立ち上げや後方支援の今後のあり方に資するものと期待されています。
岩手県などの関係機関と共同で、岩手県沿岸部で活動した医療救護班の診療録の解析準備を進めました。 平成25年度は、全てのデータが揃っておらず、試験的に釜石市の避難所/救護所1ヶ所の診療録情報4,000件について、年齢・性別・既往歴等の患者背景、臨床症状と診断、処置と処方に関するデータのコーディングを行い、全データの集計と解析に向けてのフォーマットを作成しました。また、単純集計をもとに傾向を確認しています。
一部ではありますが、上記の釜石市のデータ解析結果をもとに、学術講演を行っています。
傾向からは、慢性疾患に対する処方を希望しての受診が約4割を占めるということが明らかになっています。従来、救護所での医療ニーズとしては、外傷や感染症等の急性疾患に重きが置かれていましたが、本調査の知見を踏まえ、救護班の編成、派遣期間、チームが常備する医薬品と医療資機材の内容、被災地外からの医薬品の供給、患者の災害時の備え等、今後の広域災害における医療のあり方に関する提言が可能となります。
急性期以降の保健医療活動のコーディネートを行った「いわて災害医療ネットワーク」の運営会議事録(2011年3月26日~6月6日分)について、継時的な保健医療ニーズの変化や実際対応についてコーディングを行いデータ化しました。 コーディングでは、議事を1つの単位として、その情報源、対象となる地区、情報内容、議事の目的の4つの項目についてそれぞれ分類を行いました。 合計43回の会議議事録から777個のトピックが抽出され、その継時的な変化について概況を確認しています。
東日本大震災・津波発災後の岩手県では、県レベルの動きと市町村レベルの動きが錯綜し、十分機能していなかったということが問題点として指摘されていますが、県には様々な医療ニーズに関する情報が入っており、それに対する対応もなされていたとする指摘もあります。
県レベルの取り組みがどのようなプロセスのもとで決定し実行されていったのか、具体的な報告はなされておらず、今後の大規模災害時の急性期以降の災害コーディネートのあり方を含め、基礎的なデータとしても成果が期待されています。
国立病院機構災害医療センターと共同で、岩手県沿岸部の中核医療機関9ヶ所において発災時における入院患者の傷病名と転院先・搬送者数、搬送方法などの聞き取り調査を実施しています。
岩手県沿岸部で広域に渡って被害を受けた自治体6ヶ所(宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市)における保健医療担当課の担当者から発災後の初期対応について、昨年度に引き続きヒアリング調査を実施しました。
この調査結果は第41回日本救急医学会(平成25年10月21日から23日、東京)、第19回日本集団災害医学会学術集会(平成26年2月25日~26日、東京)にて発表しています。