◆虞列伊氏解剖訓蒙圖
Henry Gray原著, 松村矩規訳
大阪, 明治5-9(1872-1876)年, 乾・坤 2巻

  虞列伊氏解剖訓蒙圖は、ヘンリー・グレイ(Henry Gray,1827-1861)の『解剖学(Gray’s Anatomy)』第5版の図譜を銅板で翻刻したものである。 松村矩規が、明治5(1872)年に大阪医学校官板として翻訳出版した『解剖訓蒙』の図版の評判が悪く、その不備を補う理由で、同じ著者が本書を啓蒙義舎蔵版として出版した。
  「グレイの解剖学」は、1858年の初版から現在まで、編集者・出版社を変えつつも存続する驚くべき解剖学書で、さまざまな派生本も生み出している。 解剖学書の古典の地位を獲得した理由の一つに、解剖図(およびそれを起こした木版画)の独創性と理解しやすさと美しさがあったことは疑いようがない。 「グレイ解剖学」は、グレイが単独で制作したと思われがちであるが、実際には二人の合作で、グレイが文章を書き、ヘンリー・ヴァンダイク・カーター(Henry Vandyke Carter,1831-1897)が挿画を描いた。
  「グレイの解剖学」初版刊行から150年後の2008年に、本国イギリスで出版された『The Making of Gray’s Anatomy』(参考文献の原書)では、カーターに初めて光を当て、また挿画の素材となった遺体や当時の出版事情についても詳細しており、最も有名な解剖学の教科書誕生にまつわる歴史を掘り起こしている。


◆Anatomy, descriptive and surgical
(『グレイ解剖学』 原書 第2版)
by Henry Gray;the drawings by H.V.Carter
A new American from the 2th and enl. English ed, H.C.Lea, 1867


  参考:『グレイ解剖学の誕生:二人のヘンリーの1858年』,ルース・リチャードソン著,矢野真千子訳,東洋書林,2010(QS11/G79)