◆舎密開宗
ウィリアム・ヘンリー原著,宇田川榕菴重訳増注,1837年
内編18巻6冊 外編3巻1冊

  本書は、わが国最初の体系的化学書である。幕末の蘭学者、宇田川榕菴が、イギリス人ウィリアム・ヘンリーの『An Epitome of Chemistry』(1801年)の蘭訳本を日本語訳したもので、「舎密(せいみ)」は化学を意味する「chemie」というラテン語起源のオランダ語の音訳である。 「舎密開宗」は「化学入門」という意味である。
  榕菴は、薬物学、植物学、動物学および化学の豊富な知見を持っていた。本書は単なる訳書ではなく、他にも多数の化学書を参考にしており、ラボアジエ体系を基礎とする理論化学から温泉成分などの分析化学まで図版を付して詳細に記述し、自ら行った実験結果や独自の化学的見解も随所に取り入れている。 「舎密」は後に「化学」に置き換えられたが、酸素、水素、酸化、還元など多くの物質名や化学用語を確立し、それまで医者が薬剤を調整する必要から学んでいた化学の知識を、一つの体系のある学問分野として樹立した。

内編
序文
巻1 親和力、溶解、熱
巻2 酸素、窒素、水素、水
巻3 アルカリ、酸、炭素
巻4 炭酸、硫黄
巻5 硫酸、硝酸
巻6 塩酸
巻7 燐酸、石灰
巻8 弗酸(F)、苦土(Mg)、礬土(Al)、珪土(Si)
巻9 重土、アルカリ土金属
巻10 金、白金
巻11 銀、水銀
巻12 鉄
巻13 銅、鉛、錫
巻14 亜鉛、砒素、マンガン
巻15 コバルト、新金属
巻16 糖、クエン酸
巻17 安息香酸
巻18 澱粉、蝋
外編
巻1 分析法概論
巻2 分析試薬
巻3 温泉分析例

  参考:舎密開宗研究 坂口正男ほか著,講談社,1975
    中村学園大学HP  http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/yogaku/seimi/head.htm(accessed 2011-6-25)