◆ファブリカ
「人体の構造についての七つの書」
(De humani corporis fabrica libri septem)
アンドレアス・ヴェサリウス編著 ; 島崎三郎訳
東京, うぶすな書院, 2007年

  ファブリカは、アンドレアス・ヴェサリウス(Andreas Vesalius,1514-1561)が1543年に27歳の若さで著した解剖書である。原書はラテン語で全7巻からなり、本文と索引を合わせて700頁を超える大著である。
  ヴェサリウス以前の人体解剖は、解剖学者は壇上で解剖書を読み上げ、その指示に従って専門の執刀医が解剖を行い、それまでの権威ある学説を確認するという、いわば机上の解剖学であったが、ヴェサリウスはこれを強く批判し、解剖学者自らがメスをとって解剖するという伝統を作り上げた。ファブリカは、実際に観察した所見に従って正確に判断・記述を行っているという点と、人体の一部のみ取り上げるのではなく、全身の構造を網羅し図解しているという点から、近代の解剖学と医学の礎を築いたと言われている。「エピトメー」というファブリカの要約版も同時に出版した。
  ファブリカが出版された16世紀のヨーロッパはルネサンスの最盛期であり、解剖図は非常に芸術的・美術的要素が強く、迫力がある。骨格人や筋肉人が風景の中で自在なポーズをとる様は圧巻である。筋肉人の背景画は14枚がつながって1枚の絵となるしかけになっており、また随所にある意匠をこらした装飾文字も見所である。

  参考:坂井建雄, 解剖学の父 アンドレアス・ヴェサリウス, ミクロスコピア,16(4),266-272,1999


  第1巻 骨・軟骨(全40章)    第5巻 消化器・泌尿器・生殖器(全19章)
  第2巻 筋肉・靱帯(全62章) 第6巻 心臓・呼吸器(全16章)
  第3巻 静脈・動脈(全15章)  第7巻 脳・感覚器(全19章)
  第4巻 神経(全17章)
      ※現在出版されている日本語訳版は、前半部分を占める第1,2巻のみである。
          それ以降の巻の翻訳作業も順次進められている。