◆増補 當世改算記
菊池長良閲 金子昌良編
刊年不明  初版本の序には弘化4年(1847)と記載あり

  菊池長良は、天明6年(1786)、岩手県一関市川崎町(旧東磐井郡薄衣村)に生まれた、関流八伝の和算家である。関流とは、全国で広まった和算一大流派で、一関周辺では千葉胤秀(関流七伝)が関流和算を普及し、門人は約3千人ともいわれる。 長良もその門下生で、整数術とそろばんの高乗方に開く術について新発見をした、和算史上では特筆すべき人である。
一関周辺は、日本有数の和算隆盛地であり、一関市博物館が開催する「和算に挑戦!」という和算を現代風にしたクイズには、毎年全国から多数の解答が寄せられている。この「増補當世改算記」に掲載されている問題が、平成14年度の上級問題に取り上げられた。


◆算学伝心奥書
著者、刊年不明 (江戸時代後期)


◆算額
矢巾町 竜泉寺不動堂所蔵  明治12年8月15日

  算額とは、神社や仏閣に奉納された和算の問題を書いた絵馬である。本県には 一関を中心に数多く現存し、全国で2番目の103面を有する。(平成18年現在)
算額は、数学の問題が解けたことを神仏に感謝し、学業成就を祈願して奉納されたものである。人が集まる神社仏閣は研究発表の場でもあり、各地を旅して算額の問題を研究する人も現れ、算額は和算の発展を促したといえる。 県内で現存する算額は県南に集中しているが、県内最北に現存する算額が、矢巾町竜泉寺にある。
この算額は、もともとはその地方の守り神である熊野神社に奉納されていたが、保存が困難となり、10年程前近くの竜泉寺に移されたという。 「弐拾五乗開伝」と書いてあるが、25乗根(現代でいえば26乗根)を、算木という計算用具を使って計算する方法を示したものである。図形を描いた算額が圧倒的に多い中で、開法を記したものは珍しいといえる。


※今回の展示にあたって、一関市博物館より一部解説をいただいた。
参考:一関市博物館ホームページ http://www.museum.city.ichinoseki.iwate.jp/icm/
   「岩手の和算と算額」安富有恒著 1982年