◆濟生三方
  フーフェラント 著, 杉田成卿 訳
  巻上, 中, 下
  [出版地不明] : 天真樓 , 嘉永2[1849]


  『濟生三方』は1849(嘉永2)年に刊行された蘭方医学書である。
  原著はドイツ人医師のフーフェラントによる『Enchiridion Medicum』。彼は文豪ゲーテや哲学者のカントらと同時代に生き、主治医も務めた人物である。訳者の杉田成卿は杉田玄白の孫で、蘭学者として活躍した。また、題言は幕末の兵学者であり思想家の佐久間象山による。
  本書は原著のオランダ語版を日本語に翻訳したものである。

  標題における『三方』とは、刺絡(静脈を刺して悪い血を流し去る療法)、阿片、吐薬のことであり、これらは著者のフーフェラントが三大医術として重視したものである。本書には自験例や治療法が詳述されており、上巻では刺絡の方法、中巻では阿片、下巻では吐薬の効果とそれを用いた治療例がそれぞれ記載されている。


参考文献
[國本恵吉]. 礎 : 岩手医科大学を築いた先人達の偉大なる記録2. ?啄. 2004, No.52, p.4-15.
西川輝昭. 第2回名古屋大学博物館企画展記録 : フーフェラントと幕末の蘭方医‐毛利孝一コレクションから. 名古屋大学博物館報告. 2003, No.19, p.149-167.