◆洗冤集録
  宋慈 著
  1247年



  『洗冤集録』とは、1247年に中国南宋の司法官僚であった宋慈によって書かれた検死書であり、世界初の本格的な法医学書である。 当時、検死の誤りのために無実の罪で死刑になるものが後を絶たなかったため、本書が執筆された。
  内容としては、毒殺、首吊り、溺死体、腐乱死体などの死体の見分け方、検死関係の法律や検死の方法、検死報告書の書き方が記されている。
  解剖が行われていなかったこの時代に、主観を交えず冷静に死体を観察し、死亡原因を究明しようとするまなざしは科学的態度そのものだと見てとれる。 また、記載されている事件・事故からは当時の中国人の思想や行動様式を読み取ることができる。   この『洗冤集録』を参考にして、後に『無冤録』や『無冤録述』が刊行された。

資料協力
法医学講座 出羽厚二先生

参考文献
中国人の死体観察学―「洗冤集録」の世界, 徳田隆訳, 西丸與一監修, 雄山閣, 1999