◆全體新論 <乾,坤>
合信[ホブソン]著 ; 陳修堂同撰
[出版地不明] : 越智・二書堂 , 安政4 [1857]

  『全體新論』は、イギリスのロンドン伝道会医療宣教師ホブソン B.Hobson, (中国名、合信)が、中国人の陳修園の協力を得て、中国語で執筆した解剖生理学の入門書であり、医学の解説とキリスト教入信の勧めとを関連させて書かれているのも特色の一つである。内容のほとんどは人体の構造を解剖学的に記述したものである。随所に神に対する信仰のすすめの記述も見られ、最後の「霊魂妙用論」では「救世主基督霊魂之医師也、新旧約聖書霊魂之方薬也」とあり、キリストや聖書といった言葉が見られる。
『全體新論』は、咸豊元年(1851年)に広東恵愛医館から刊行され、その後、上海墨海書館などからも刊行されている。19世紀以降の中国で、初めて翻訳された近代西洋医学書である。これ以前にも西洋医学書の翻訳書はあったが、近代医学を扱った内容ではなく、また社会への影響力も大きくはなかったので、広く流通した最初の医学書といえる。
日本での翻刻は、安政4年(1857年)に最初に出版されている。本学では、越智蔵版と二書堂版のほか、図録の『全體新論圖』を所蔵している。

参考文献
鈴木貞美編,『東アジアにおける近代諸概念の成立(国際シンポジウム)』,京都,国際日本文化研究センター,2012,p.173-178
舒志田, 『全体新論』と『解体新書』(重訂版を含む)との語彙について,或問,Vol.53,No.8,2004,p53-74
龍谷大学展示室,http://www.ryukoku.ac.jp/tenjishitsu/t2/13.html