◆西説内科撰要<全18巻>
玉凾涅斯垤我爾徳児[ヨハネス デ ゴルテル]著 ; 宇田川玄随晉譯,
桂川甫周國瑞閲 ; 槐園, 文化7年 (1810)

  本書は、日本で刊行された最初の西洋内科書である。津山藩医 宇田川玄随(塊園)がオランダ人ヨハネス・デ・ゴルテル著の『簡明内科書』(1744)を翻訳して1793年(寛政5)から江戸で刊行を開始し、玄随の没後に出版元が大阪に移って数転、十数年を経た1810年(文化7)に全18巻が完結した。
当時、すでに西洋の外科医学書は、前野良沢、杉田玄白らが翻訳した『解体新書』で知られていたが、内科医学書の翻訳はなかった。本書により西洋内科医を標榜するものも出るなど近代内科学の礎となった書物である。
玄随(1755-97)は元来漢方医であったが、桂川甫周や杉田玄白・前野良沢らと交流して蘭学へと転向した。玄随は、本書のほか西洋内科に必要な西洋薬物書『遠西名物考』を準備し、さらに西洋薬物が化学技術に基礎を置くことに着目して、ブランカールトの内科書付録『製錬術』を翻訳し、日本に初めて製薬化学を導入した。

参考文献
『世界大百科事典;15』東京,平凡社,1888
津山洋学資料館 http://www.tsuyama-yougaku.jp/top.html