◆日本書紀<全30巻>
舎人親王撰,八尾甚四郎友春ほか,寛文9年 [1669],

  『日本書紀』は、日本で初めて公的に編集された歴史書である。『日本(にほん)紀(ぎ)』とも呼ばれる。全30巻。当初は系図1巻も添えられていたが、これは早くに失われた。元正天皇の命によって、舎人(とねり)親王が編纂し720年(養老4)に成立した。編集の由来を述べた序文を欠いているため、成立過程は明らかでない。本書は国家の正史として重んじられ、平安時代にかけて引き続き、『続日本(しょくにほん)紀(ぎ)』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文(もん)徳(とく)天皇実録』『日本三大実録』の六国史が編纂された。
『古事記』と重複する内容も多いが、伝承的な『古事記』に対し、歴史を記しながらも、中国の史書を引用して事実を誇張したり、表現を繕い飾ったりしている場合が多い。 皇室の尊厳と支配の正当化を説く政治的意図がみられ、多数の類似する神話伝説を別伝の形で併記することで、歴史としての客観性を与えようとしている。また、先に挙げた『古事記』が変体の漢文体で記されているのとは異なり、純粋の漢文で記され、国際的に通用する正史をめざして書かれている。

参考文献
『大事典 NAVIX』 猪口邦子ほか監修,講談社,1997
『ブリタニカ国際大百科辞典15』 フランク・B・ギブニー編,ティービーエス・ブリタニカ,1988