◆病家須知 合刻 坐婆必研 <全8巻>
革谿道人 [平野元良著],擇善居, 天保3年 [1832]

  「病家須知」とは、「病人のいる家では知っておくべきこと」の意味で、わが国初の「家庭看護必携」である。
内容は、日々の養生の心得に始まり、病人看護の心得、食生活の指針、妊産婦のケア、助産法、小児養育の心得、当時の伝染病の考え方・ 処置対策、急病と怪我の救急法、終末ケアの心得、医師の選び方まで多岐にわたる。
一般庶民向けに医学・衛生・保健知識を具体的にまとめ、日本独自の視点からみた予防医学書といえる。
 著者の平野元良(重誠)(1790-1867)は、徳川将軍家の主治医であった多紀元簡に学んだが、官職につかず、町医者として庶民の治療に専心した。 江戸後期は、文化が円熟し、商品経済が浸透する一方、天災異変による大飢饉やコレラの流行などで病気になればそのまま生死にかかわった。
元良は「医者三分、看病七分」という考え方で、家族のかかわりの大切さを説き、庶民の健康への熱い願いをこの書に込めている。

<各書目の内容>
第1巻 養生総論
第2巻 食養生
第3巻 小児養育
第4巻 婦人養生
第5巻 伝染病
第6巻 中毒救急
第7,8巻 産科に関すること『坐婆必研』(とりあげばば心得草)上・下巻


参考文献
『病家須知』 平野重誠原著,中村篤彦監訳,看護史研究会翻刻・訳注,農山漁村文化協会,2006