高度医療を守るために整備された、感染症対策に徹底した施設 感染症対策センター

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高度医療を守るために整備された、感染症対策に徹底した施設 感染症対策センター

高度医療を守るため に整備された、 感染症対策に徹底し た施設 感染症対策センター

令和4年3月に整備された感染症対策センターはコロナ重症患者への迅速かつ万全な治療が可能な施設だ。コロナ後も岩手県の広範な感染症対策施設として期待される同センターについて伺った。

高度医療の提供とコロナ重症患者治療の両立を図る

時間に追われながら、新しい建物と仕組みを一から作る

令和4年3月、岩手医科大学は、新型コロナウイルス感染症重症患者受け入れ専用施設として附属病院敷地内に感染症対策センターを整備した。岩手医科大学附属病院では従来、コロナ重症患者をICU内の個室2室を中心に受け入れを行っていたが、該当の個室以外の病室は開放的な空間となっていることから、それ以上の人数のコロナ重症患者を収容すると、ICU全体が使用できなくなる。本来であれば岩手県唯一の特定機能病院である大学病院として高度な治療機能を有し、岩手県全体の医療体制を維持することが役割であるのに、がん、脳卒中、心臓病その他のコロナ以外の高度医療を要する手術がストップし、高度医療の提供に支障が出ていた。そのため、附属病院が担う高度医療の提供とコロナ重症患者治療の両立を図ることを目的に、附属病院とは別棟に同施設を整備した。同施設のことについて長島広相感染症対策センター長に伺った。

「施設の整備までに大変だったのは、ただでさえ通常業務がコロナ禍で多い中、完全に『+α』としてまったく新しい建物と仕組みを一から作り出さなければならなかったことでした。とにかく常に時間に追われていました。近隣には新型コロナ患者専用の病棟を院外に造設したケースがなく、参考にできる資料が少なかったのも悩ましかったです。実際に施設のコンセプトが決まった後は、建物の設備や物品の設定など細かいところも一つ一つ確認をしていきましたし、マニュアル作りも大変な作業でした。また、急変時の対応はどうするのかなどこれまでGICUを使用していた時にも決めておくべき事項にもかかわらず、しっかり決めていなかった案件も改めて検討し、対応を決定する必要性がありました」

見た目にも区別しやすいように分けられた「ブルーゾーン」「イエローゾーン」「レッドゾーン」

同施設は、コロナ重症患者の集中治療を念頭に、陰圧管理される病床6床に、人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)といった生命維持管理装置を整備する他、CT撮影装置を設置することにより、的確な診断の下、コロナ重症患者への迅速かつ万全な治療を提供することを可能としている。完成した「感染症対策センター」の施設の特徴はどんなところなのか。

「新型コロナウイルス感染症患者専用の病棟であり、軽症から人工呼吸器、ECMOまで対応を想定した作りになっています。重症患者の場合、ネーザルハイフローやNPPVなどのエアロゾル発生リスクも高いので、空気感染対応も念頭とした個人防護具の着用を定めています。当施設では通常の衣服で立ち入ることができる『ブルーゾーン』、中リスクの個人防護具着用で立ち入ることができる準汚染エリアである『イエローゾーン』、空気感染も対策した高リスクの個人防護具で立ち入ることができる汚染エリアである『レッドゾーン』の3か所に分けています。見た目にも区別しやすいように床の色もそれぞれのカラーになぞらえた色調を選んだ作りになっています。1号室と2号室、3号室と4号室はそれぞれ状況に応じて部屋の仕切りを移動させて二部屋分の広い個室として使用することができます。これは最重症でECMO+人工呼吸器使用の場合、スペースが必要と考えたためですね」

コロナ後、新たな感染症が流行した時にも対応できる施設に

「軽~中等症」と診断された場合も当院への入院を対応

重症患者の受け入れ、入院までの流れは。

「流れとしては、基本は病院から岩手県の調整班へ搬送依頼が出ると、当院へ入院可能か連絡が来ます。当院の方では病院長、関連診療部長、感染制御部、感染症対策センター看護師長へ連絡が回り、担当医から実際に使用する薬剤を薬剤部へ、CTなどの画像を感染症対策センター内で撮影するときは放射線部へ連絡をする、といったフローができています。当院での受け入れ可能時間が判明次第、県の調整班へ受け入れ可能時間をお伝えします」

重症患者受け入れ施設で、「軽~中等症」と診断された場合は、どのような対処となるのだろうか。

「原則は県の調整班の指示になりますので、県の方から他院へ移すように指示があればそのように対応します。ただ現実的には当院で診断され、入院が必要と判断された患者さんは当院で入院対応しています」

地域医療を堅持する北東北における医療の最後の砦

今回の新型コロナが終息した時に、感染症対策センターの使用用途はどのようなものになるとお考えなのか。

「今後どのような感染症が今回の新型コロナウイルス感染症並に流行するかわかりませんが、次のなんらかの感染症が流行した際にも十分に使用できる施設であることは間違いありません。現時点では、特定の感染症が流行していない場合の使用方法については、しっかりと取り決めたわけではありませんが、飛沫感染や空気感染を起こすような感染症患者の入院治療に使用することも一つの選択と思われます」

最後に、このコロナ禍に完成させた感染症対策センターの意義は。

「このセンターは当然新型コロナウイルス感染症の患者の治療を行う施設です。軽症から他院では行えない重症患者まで治療できることは地域にとって意義のあることだと思います、またもう一つのコンセプトである附属病院の特定機能病院としての機能を守るという側面も重要な意義をもっております。県内で当院しかできない医療を守っていくための砦となるべく施設だと考えています」

同施設はセンター長の言葉どおり、新型コロナウイルス感染症が終息後も、新興感染症の対応にも活用し、岩手県における広範な感染症対策に資する施設として継続的に運営していく。県内唯一の特定機能病院として、そして北東北における医療の最後の砦として地域医療を堅持していくことだろう。