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治療内容・成績

多発性骨髄腫

多発性骨髄腫とは

多発性骨髄腫は、形質細胞のがんです。形質細胞はBリンパ球が成熟した段階の細胞で、免疫グロブリンというタンパク質をつくっています。この細胞ががん化して骨髄で増えることにより正常の造血が妨げられ、貧血、出血傾向や感染症などが生じます。骨髄腫細胞はMタンパクといわれる1種類の免疫グロブリンを大量につくるため、これが腎臓などの臓器に悪影響を及ぼして臓器の機能低下を起こします。また、骨髄腫細胞は骨を破壊する作用があるため、骨の痛みや骨折などが生じます。このように、多発性骨髄腫は極めて多彩な症状を来す病気です。

多発性骨髄腫の疫学

多発性骨髄腫の発病には、年齢や性別、遺伝的素因、環境因子などが関係していますが、明らかな原因は不明です。さまざまな遺伝子の異常が認められており病態への関与が示唆されています。骨髄腫の多くは40歳以上の方に発症し、年齢が進むにつれて発症が増加します。性別では男性にやや多く、わが国では人口10万人あたり2〜3人がかかっているといわれています。

多発性骨髄腫の症状

症状は多彩で、骨髄腫細胞による正常造血の障害、Mタンパクによる障害、骨の障害に分かれます。

  • (1) 正常造血の障害
    骨髄腫細胞が骨髄で増えると、他の血液細胞の産生が妨げられます。赤血球、白血球、血小板が減ることにより、息切れや動悸、発熱、出血しやすいなどの症状が現れます。
  • (2) Mタンパクによる障害
    Mタンパクには体を守る働きはなく、正常な免疫グロブリンが減ってしまい、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。このMタンパクが大量に増えると血液の粘稠度が上がり、血液の循環が悪くなります(過粘稠度症候群)。頭痛やめまいなどの症状を生じます。腎臓に詰まると腎不全を来たし、むくみがでることもあります。
  • (3) 骨の症状
    骨からカルシウムが溶け出し、骨がもろくなり骨折が起きやすくなります。また血液中のカルシウムが高くなり、高カルシウム血症になると口の渇きや意識障害などが現れます。脊椎の圧迫骨折では、神経が圧迫され、手足の麻痺といった重篤な症状が起こることがあります。

多発性骨髄腫の診断

多発性骨髄腫の診断と治療方針を決定するためには、いくつかの検査が必要です。 診断確定のためには、骨髄穿刺検査を行います。血液検査では、貧血、腎障害、カルシウムなどの値を測定します。免疫電気泳動や免疫固定法により、M蛋白の型を調べます。また、尿検査によりベンスジョーンズ蛋白の有無について調べます。さらに、全身の骨の状態を調べるためにレントゲン写真を撮影します。

多発性骨髄腫の病期分類

多発性骨髄腫と診断されると、次に病期(病気がどの程度進行しているか)を決定します。Durie&Salmon分類が古くから用いられています。これは、ヘモグロビン値、カルシウム値、X線検査による骨病変の程度およびM蛋白量の4つの項目で規定され、図に示すように分けられます。一般に病期II以上で治療の適応ですが、カルシウム高値、腎機能低下、貧血、骨病変、過粘稠度症候群、アミロイドーシス、繰り返す感染症のいずれか一つでもある場合には症候性骨髄腫と診断され、治療が開始されます。

項目 病期 I
以下のすべて
病期 II
中間
病期 III
1つ以上
ヘモグロビン > 10g/dL   > 8.5g/dL
血清
カルシウム
正常   <12mg/dL
骨X線像 正常または
孤立性形質細胞腫
  正常な骨融解像
M蛋白量
IgG
IgA
尿BJP

< 5g/dL
< 3g/dL
< 4g/dL
 
< 7g/dL
< 5g/dL
< 12g/dL

亜分類 A:クレアリニン< 2mg/dL、  B:クレアチニン> 2mg/dL

最近、国際骨髄腫ワーキンググループにより、新しい国際病期分類が提唱されています。これは血清アルブミン値とβ2ミクログロブリンの値の2つを指標としています。

多発性骨髄腫の予後

年齢や合併症の有無、病型、病期などが影響します。アルブミンの値が低い場合やβ2ミクログロブリンの値が高い場合には経過がよくありません。また、染色体検査で13番染色体が欠失している場合にはその後の経過が良くないことが知られています。

多発性骨髄腫の治療

  • (1) 化学療法
    一般的にはメルファラン/プレドニン療法(MP療法)が推奨されます。しかし、腎障害が強い場合や骨病変がひどい、治療効果をより早く期待したい場合には、奏効率が高く効果発現が早い多剤併用化学療法が推奨されます。
  • (2) 自家末梢血幹細胞移植
    自家移植が可能な年齢で、移植が考慮される場合には、ビンクリスチン/ドキソルビシン/デキサメタゾン(VAD)による多剤併用療法を行います。その後、自分の造血幹細胞を採取保存しておき、大量の化学療法を行う際に幹細胞の移植を行う方法です。現在ではこの方法で2回(タンデム)移植を行うことが推奨されています。
  • (3) 同種造血幹細胞移植
    移植関連死が高く、標準治療としては行われません。最近、移植関連死が少ない骨髄非破壊的移植(ミニ移植)が臨床試験として行われています。
  • (4) 再発・難反応例
    従来の化学療法では十分な効果が得られません。近年、サリドマイドやボルテゾミブといった新規薬剤が開発され、その有効性が確立しています。
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