治療内容・成績

胃がん

胃がんとは

胃がんは胃の粘膜から発生するがんのことをいいます。胃には外から食べ物が入ってきますが、その中には発がん性のあるものも含まれています。また、胃液という酸性の消化液が出てきます。さらにはピロリ菌という細菌が住みついて胃粘膜を荒らします。このようないろいろな刺激にさらされるため、潰瘍ができたりがんができたりするのです。胃がんは胃の内側を覆う粘膜から発生するので、胃の中から内視鏡(胃カメラ)で観察することによって比較的早期に診断することが可能です。胃がんはいぼのように隆起したり、潰瘍のように陥没する場合が多く、バリウムによるX線検査や内視鏡検査で胃の内部の凸凹や、色の変わったところを詳しくみることで診断できます。
胃がんは日本人に多い病気ですから、40歳を超えたら毎年検診を受けることが望ましいです。また、胃がんそのものは遺伝しませんが、血縁の方に胃がんにかかった方がいる場合はより注意が必要です。
消化器がんの中で胃がんは治りやすいがんの一つです。診断のレベルが向上して早期のがんが見つかるようになったこと、安全にしかも充分な手術ができるようになったことがその理由です。もちろん、抗がん剤を使った治療も進歩し、手術では治せない胃がんの治療に効果を上げています。早期の胃がんが増えたので進行した胃がんとは違う患者さんにとって負担の少ない治療法が工夫され、当院でもこの治療法を積極的に導入しています。一般に胃がんの治療を受けても、多くの方は立派に社会復帰できます。胃がんという病気をよく理解し、早く診断し、最も適切な治療法を主治医と相談することが大切です。

胃がんの症状について

胃がんは、がんがかなり進行しても全く症状が無い場合も多くみられます。しかし、一方では治療を受けている方の50%が早期胃がんで、そのうちの50%は何らかの症状がきっかけで検査を受けています。早期の胃がんの多くは病気の中に潰瘍ができるのでそのために痛み、出血、胃部不快感などが検査を受けるきっかけになります。進行したがんの症状は、痛みより食事が通らない、胃が重い、体重が減る、食物がつかえるといったものです。貧血を指摘された場合の精密検査で胃がんが発見されることもあります。

胃がんの診断方法

胃がんが疑われると、胃の内視鏡検査や胃X線検査を行います。胃がんの広がりを調べるために超音波検査、CT、注腸検査も行います。

  • <胃内視鏡検査>
    内視鏡を用いて胃の内部を直接みて、がんの広がりや深さを調べます。がんの疑われる組織の一部をとってがん細胞の有無を調べる病理検査も行います。
  • <胃X線検査>
    バリウムを飲んで、胃の形や粘膜の状態を見ます。検診で最も用いられる方法です。異常が認められると内視鏡検査などの精密検査が必要になります。
  • <超音波内視鏡検査>
    胃がんの診断がついた方に、その胃の壁の中の深さを診断する目的に行います。
  • <腹部超音波検査・CT検査>
    胃がんの診断が確定した後に、転移や周辺の臓器への広がりを調べるために行います。治療後の、再発の有無の検査としても行われます。CT検査は造影剤を使用するのでヨードアレルギーのある方は申し出てください。
  • <注腸検査>
    おしりからバリウムと空気を注入し、大腸の病気を調べる検査です。胃のすぐ近くを通っている大腸にがんが広がっていないか、大腸にも異常がないかを調べます。大腸の内視鏡検査で代用する場合もあります。

胃がんの病期分類

病期とは、がんの進行度を示す言葉で、ステージとも言います。胃がんが胃の壁のどの深さまで進んでいるか(T、深達度)、どこのリンパ節まで転移しているか(N、リンパ節転移)を目安として、総合的に決めています。胃がんの病期はIA, IB, II, IIIA, IIIB, IVの六つに分かれ、IAが最も早期のがんで、IVが最も進んだがんです。早期胃がんとはIAとIBで治る可能性が極めて高い病期です。中でもIA期であれば内視鏡治療や腹腔鏡下手術などの低侵襲の治療が可能になります。II期は中くらいに進んだがんで手術を行いその後に化学療法で再発を防ぎます。IIIA, IIIB期は進行しているもののまだ手術によって治る可能性のある病期です。手術後あるいは手術前の化学療法によって再発を防ぎます。IV期は胃がんが進行して転移している状態で、手術のみでの治療は困難なため化学療法を中心に治療を行います。

胃がんの進み具合(病期、ステージ)
  N0 N1 N2 N3
T1、M IA IB II IV
T1、SM
T2 IB II IIIA
T3 II IIIA IIIB
T4 IIIA IIIB IV
肝、肺、腹膜など遠くに転移している IV  
T1、M:胃の粘膜に限局している
T1、SM:胃の粘膜下層に達している
T2:胃の表面にがんが出ていない。筋層あるいは奬膜下層まで
T3:奬膜を越えて胃の表面に出ている
T4:胃の表面に出た上に、他の臓器にもがんが続いている
NO:リンパ節転移がない
N1:胃に接したリンパ節に転移がある
N2:胃を養う血管に沿ったリンパ節に転移がある
N3:さらに遠くのリンパ節に転移がある

胃がんの治療方法

  • <内視鏡的治療>
    最近では早い時期での胃がんが発見され、リンパ節転移のないと考えられる胃がんの方が増えてきました。リンパ節転移の少ない胃がんのタイプもわかってきており、リンパ節に転移が無ければ、内視鏡的に胃がんが完全にとれれば治ることになります。胃の粘膜の浅いところにある胃がんで、分化型であれば、内視鏡で治療を行います。ただし、内視鏡で切除した結果、深いところまでがんがある場合や、血管やリンパ管にがん細胞が入り込んでいる場合には、リンパ節に転移している可能性があるので、手術を行います。
  • <手術療法>
    胃がんでは手術療法が最も有効で標準的な治療法です。胃の切除と同時に、決まった範囲のリンパ節を取りのぞきます(リンパ節郭清)。胃の切除範囲はがんのある場所や、病期などから決定します。
  • 1)切除範囲
    通常の胃がんの手術では、胃の出口側2/3を切除します。これを幽門側胃切除といいます。胃がんが胃の入り口に近い場合には、入り口よりの胃を切除する(噴門側胃切除)、または胃を全部切除(胃全摘)する手術を行います。最近では胃の真ん中にできた早期がんには胃の出口の働きを残す手術(幽門保存胃切除)も行われます。
  • 2)リンパ節郭清
    胃がんがある程度進行すると、リンパ節へがん細胞が飛び火(転移)している可能性が生じます。そこで胃がんの手術では胃をとるだけではなく、近くや少し離れたリンパ節を予防的にとることが行われます。これをリンパ節の郭清といいます。定型手術ではこのリンパ節郭清を胃に接して存在する1群リンパ節と胃に流れ込む血管に沿って存在する2群リンパ節を取りのぞくD2郭清が行われます。
  • 3)縮小手術(腹腔鏡手術)
    早期の胃がんでは定型手術を少し控えても同様な優れた治療成績が得られることがわかってきました。当院ではこれらの早期がんの方を対象に腹部に小さい穴を数カ所開けて、専用のカメラや器具で手術を行う腹腔鏡手術を行っています。通常のおなかを大きく開ける開腹手術に比べて、手術による体への負担が少なく、手術後の回復が早いため、手術件数が増加しています。胃癌治療のガイドラインでは胃がんの腹腔鏡下手術はステージIの胃がんへの臨床研究に位置づけられており、岩手県内では広く普及していないのが現状です。早期胃がんと診断され、この治療法を希望される方があればいつでもご相談ください。
  • <化学療法>(抗がん剤治療)
    胃がんの抗がん剤治療には手術と組み合わせて使われる補助化学療法と手術での治療が難しい進行した方や再発時に使われる抗がん剤治療があります。抗がん剤の効果や副作用は人によって程度に差があるため、よく説明をしながら行います。
  • 1)術後補助療法
    手術後の再発を防止するための治療です。病期でII, IIIA, IIIB期と診断された方が対象になります。通常手術後にティーエスワンという内服薬を1年間服用します。
  • 2)術前化学療法
    手術で切除できると思われるがんでも、まず抗がん剤で小さくし、より確実な切除を目指して行う治療です。現在様々な抗がん剤の組み合わせが試みられており臨床試験として行われています。
  • 3)切除不能例や再発時の化学療法
    近年、胃がんに効果のある抗がん剤が続々と開発されています。通常、抗がん剤を一種類もしくは2種類を組み合わせて投与します。効果と副作用に注意しながら治療継続や他の種類の抗がん剤への変更を検討しながら治療を行います。しかし、薬だけでは完全に胃がんを消滅させることができないのが現状であり、副作用と効果をみながら少しでもいい体調で長生きできることや、病気が小さくなって手術ができることを目標に治療を行います。
  • 4)抗がん剤(制癌剤)感受性試験  
    抗がん剤の効果があるかないかが投与前にわかることにより無駄な治療を省くことが可能になります。当院では摘出した手術標本(胃)や腹水、再発した病巣などからがん細胞を分離し抗がん剤の感受性(効き目)を予測する検査を症例によって行っています(高度先進医療に認定)。検査が適応となるかあるいは可能であるかなど個々の状況によって異なりますので、本検査を希望される方は事前にご相談ください。

胃がんの治療成績

岩手医科大学附属病院外科における治療成績については>こちらをご参照ください。

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